HVTC(高圧3極管接続)も2KVを越えると、第2グリッド電圧が不気味なほど高くなってしまうため、それなりにキビシイものがあります。またOPTも4〜5KVあたりまで電圧がかかるのでメーカーの保障はありません。

しかし4−400AによるHVTCではプレート損失400Wの低内部抵抗オーディオ出力管に変身するはずです。さらにこの球を2000V以上の3結で動作させること自体が、メーカーの保障外である「前代未聞の定格無視」という、ハイリスクなアンプ作りを意味する面白味を持ちます。


     


早速入手した4−400Aの3極管接続プレート曲線を測定し、バイアス電圧の最適値を見てみるとー、・・・・よ、よんひゃくボルトー!つまりドライブにはP−Pで800V必要なことになります。確かに(μ)が5でそれを2000Vまでスイングするのに400Vは必然でした。が・・・。

とはいえ最初のプランは意外と身近にありました。歪の少ないFU−50HVTCシングルをエキサイターとして使い、OPT1次側信号電圧を送り出せば良いのです。





問題は耐圧で、当初予定していたSEL製L‐195という10kΩ50Wの大型タイプでは、実際のところ耐圧はともかく20KΩ80W用として使うのに荷が重い気がします。

というのも30Hzで20kΩを維持するには100Hものインダクタンスが必要です。ならばムリをして大型シングル用OPTを使うよりプレートチョークと高圧コンデンサによるプレート回路、及びPP用OPTによるマッチング回路で構成したほうが良いかもしれません。

一方PP用でも100WクラスのOPTというのは最近あまり見かけず、ましてや10kΩ以上の物は見当たりません。そこで同じくSEL製50W10kΩのT−4730というPP用OPTを2個、1次側直列、2次側並列で使うことにしました。


     


高圧コンデンサは20kΩという負荷抵抗の高さから3μFもあれば充分で、オイルコンが使用できます。

動作の大筋がつかめたところで中心動作点をもう少し細かく詰めます。というのも今回はエコヒーティングを行うにあたりEp=2000V、Ip=100mA時の、フィラメント電圧の違いによる最適バイアス値を探す必要があるからです。

エコヒーティングとは送信管の有り余るヒーター電力を、オーディオアンプに必要充分な値まで勝手に下げてしまおうという考え方で、とくに第一グリッドの温度低下によるグリッドエミッションの防止や送風音の低減に有効であるだけでなく、場合によっては直線性のカイゼンにも効果があります。

ただしこのような手法はまだ一般的に行われていないので、HVTC同様多くの実験例を示してゆくしかありません。4−400Aではヒーター電力は下記の表のようになりました。

   4−400Aのヒーター電圧対ヒーター電力(DC)
4,0V 4,5V 5,0V
12,5A 13,5A 15,0A
50W 61W 75W


さらにヒーター電力と真空管の寿命につい述べているアイマックのサイトを、このwebページを読まれている方から教えていただきました。それによれば−15%に下げると、あっというまに寿命が尽きてしまうことになります。


     


また別のグラフもあり、そこに載っている計算式に沿って計算すると、フィラメント電圧4V時、つまりヒーター電力50W時でプレート電流100mAの場合の縦軸値(レシオ)は0,002となります。





この値を上のグラフに当てはめてみると、エクセレントに近いグッドとわかり、これではフィラメント電圧を下げたA1級動作が大丈夫なのかダメなのか、一体どうなるやらよくわかりません。

しかしとりあえず各々の動作点における3定数や予想DF値など、特性の違いを測定してみました。予想出力はどの場合でも70〜80Wでしょう。まずはEf=5v時です。


            


あえて言わせてもらえばフィラメント用電源は5V定格なので、本来無理して電圧を下げる必要はありません。これに対しエコヒーティング時の特性は下のようになりました。


         


以上の計測結果によると、エコヒートしてもμが上昇するに連れgmも上昇するので、内部抵抗の変化に大きな違いは出にくいようです。というより感度が上昇してドライブしやすくなっていることから、今回はEf=4Vで設計を進める事とし、バイアス電圧は−340V付近で動作させます。

さらにドライブ方式のプランBとして、エキサイターとの連携動作ではなく6HV5による単独アンプ構成も考えておきます。6HV5という球は2000Vあたりこそ得意領域で、その場合入力2V(1,4Vrms)で80Wのフルパワーですから、10Wなら入力0,7Vrmsと使いやすく、過大入力に対しても安全な入力感度だと言えます。


          


その場合6HV5の負荷抵抗が100KΩなので、理想としては4−400Aのグリッド抵抗に500kΩ程度を用いたい所ですが、グリッド回路の直流抵抗が高くなり過ぎてしまいます。

そこで直流を流す必要のないインダクタンスの大きなグリッドチョークとして、10KΩの小型PP用OPTを使ってみようと思います




つづく








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最適動作点と動作方法を探る
その1
1 最適動作点と動作方法を探る
2 独立型アンプとグリッドチョークの改造
3 電源回路とパーツレイアウト
4  ドライバーのカイゼンと部品配置
5、実作に向けて爆発の時代
6、実作に向けて計測の時代
7、特性向上に向けて
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