今となってはオークションでもほとんど見ることの無くなった物に、フラッシュライト用ケミコンがありますが、結局なぜ電源に使ってはいけないのか良くわからないまま高輝度LEDの登場で消え去ろうとしています。

試しにメーカーのサイトを見ても具体的な答え(爆発する!など)は無く、ただ「使用不可」とだけ書いてありますので、ケミコンの性質を理解するためも、今一度その理由を考えてみました。


    


フラッシュ用のケミコンに魅力を感じる点は、350Vという真空管アンプに適した電圧と、メーカーの説明にもあるよう、容量の割りにサイズが小さいという所でしょう。(アンダーライン)

カタログで350V100μFあたりを比較して見ても、汎用が8立方cmであるのに対し、フラッシュ用は3,14立方cmと、40%以下の体積に収まっています。(赤い枠)


                                  0,9x0,9x3,14x3,15=8,011cm3


                            0,5x0,5x3,14x4=3,14cm3

また用途が限られているが故の低価格という部分も、かつてジャンク屋の中では光輝いて見えました。ではいったい電気的特性はどうなのでしょうか。

フラッシュライト用と言えば、ほとんどショートに近い、一瞬での大量電流放出作業を行うため、一部のスーパーキャパシタのように瞬発的電流特性に問題があるとは思えません。

例えば下の図において、極めて細かいエッチングを施すことにより体積比で静電容量を大きくしたのでは、電極が細くなり内部抵抗が上がってしまいます。

それは内部直列抵抗と容量リアクタンスとの比であるタンジェントデルタ(tanδ)の値を比較してもわかり、100μFにおける内部抵抗成分は、汎用の3,2Ωに対し、フラッシュ用は4分の1の0,8Ωと計算されます。(緑の枠:ただし容量リアクタンスを求める時の周波数は120Hz)


    


そこで考えられるのが電解質の温度特性です。通常のフラッシュによる使用では、放電してから次の放電までかなりの間隔があり、しかもそれが数10時間も続ことはありません。

しかし整流回路では少なくとも1秒に50回充放電を繰り返し、それが何100時間続くかわからない訳ですから、わずかに電気抵抗を持つエッチング部分に流れる電流で、電解質の温度が上昇します。

つまり一般のケミコンは容量を多少犠牲にしても温度特性に強い電解質を使いますが、フラッシュ用ではその必要がないため、目一杯容量の稼げる電解質を使っているのではないでしょうか。

もしそうであればリップル電流のほとんど流れない電源フィルターの2段目、もしくは3段目での使用には何ら問題が出ないはずです。


    


ましてや電流変動の少ないA級アンプでは尚の事で、いまさらながらこの部品のポテンシャルに気がついたような気がします。

ただしアンプ自体が熱を持ってコンデンサを暖めてはダメですから、温度管理の徹底したアンプで無いと、結局使えません。


   


その意味では自然空冷に頼っているほとんどの真空管アンプは、使用を控えた方が良さそうだということになってしまいます。

残念ながらフラッシュ用ケミコンは冷却に対し、しっかりとした認識を持ったアンプ製作者にのみに許されし部品、ということでしょうか。

また古いケミコンは使用開始時に電圧処理なるものが必要なようです。


   


他方アンプ用部品としてはまだほとんどの人が使っていない物に、冷却バックアップ用リチウムイオン電池があります。


      


これもケミコン同様化学部品なため、同じかそれ以上の気配りが必要となり、扱いの難易度が相当上がります。

しかし人々の心の中には個性的なアンプを作りたいという気持ちが必ずあると思いますから、冷却プランを明確にして、化学部品をうまく取り込み自由奔放な設計のアンプ作りを楽しことが出来るはずです。

そしてファンやヒートシンクなども含め、そのための環境は真空管の歴史上、かつて無いほど整っています。




皆様のご意見をお待ちします。








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