天気予報などで良く語られるフェーン現象ですが、発生原理の説明が、いつも理解できません。しかし説明している人は気象予報士ですから、本当の理由は、いつか上手に説明してもらえる日が来るはずです。

それはともかく、なぜ南から吹いた風が山を登って雨を降らし、反対側に降りてくると、高温の風になるのでしょうか。そこでフェーン現象について独自に理解を進めるのですが、大事なポイントは、


 
@ 空気は、減圧すると膨張して温度が下がり、圧縮されると温度が上がる。

 
A 水は氷から水、水から水蒸気、と変化するに連れ、その熱エネルギーレベルが上り、
    逆に熱エネルギー(カロリー)を奪うと、水蒸気は水になり、水は氷になる。


という2点です。

そして「大気」というのは、酸素と窒素で出来た「空気」と、気体になった水「水蒸気」との、
絶妙な「気体カクテル」なのです。

まず@の例で自転車の空気入れを押している時、シリンダーの温度が上がっているのですが、圧縮による温度上昇の実例は、なかなか体験しにくいでしょう。


                


一方減圧では、パソコンなどの埃を吹き飛ばすスプレー缶を連続して使用すると、内部の圧力が低下して、缶の表面に水滴や氷が出来るので、温度低下が実感できると思います。

またAの例では、氷を水にしたい時(ガリガリ君、冷凍ギョーザの解凍)、水を水蒸気にしたい時(茶わん蒸し、小籠包)など、体温や電子レンジやガスコンロなどで熱エネルギー(カロリー)を加えて作るので、誰もが体感しているでしょう。



 こうした膨張や圧縮による熱エネルギーの伝達作業を極端に効率よく行うのが、 
 かつてオゾン層破壊で有名になった、フロンで知られる、エアコンの冷媒というものです。

 エアコンの冷房では、冷媒をコンプレッサーで圧縮して強引に液化(低エネルギー化)させ、
 圧縮により出てきた熱エネルギーを、室外機のファンで冷やさなければならないため、
 夏場において、エアコンの室外機からは、熱風がガンガン出るのです。


  


 次に液化した低エネルギーの冷媒を、パイプで室内機のラジエーター(アルミのヒダヒダ)まで送り、 
 室内の空気が持つ熱エネルギーを使って、膨張、蒸発、(高エネルギー化)させるので、
 室内の空気が冷えるのです。

 高エネルギーになってしまった冷媒(気体)は、再び室外機で圧縮された後、
 熱エネルギーは室外機のファンで冷却廃棄して、再度低エネルギーの冷媒(液体)へという
 繰り返しになります。

 冷媒とは、圧縮や膨張により、液化したり蒸発したりしやすい物質で、
 熱エネルギーの運搬者とも言えます。



以上の点を踏まえて下のような図を作りましたので、それを見ながら説明したいと思います。





まず太平洋から暖かい空気と、温かい水蒸気(水)の混ざった風が吹き、山を上昇します。そしてこの次が肝心です。

よく天気予報などでは、「その空気が上空で冷やされて、雲が発生し・・・」と解説しますが、実はここに間違いがあるのです。強い南風の大気団は移動が速く、のんびり冷やされている時間などありません。

つまり上空に上った大気団は、外部から冷やされるのではなく、気圧の低下で膨張し、自ら勝手に冷えてゆくのです。そのため内部に持っている熱エネルギー(カロリー)は、放出することなく保存されます。

こうして勝手に冷えた大気団は、内部の水蒸気をも冷やし、水蒸気の熱(カロリー)を奪い取り始めます。

ここでもし水がカロリーを奪われても、水蒸気のまま、もしくは雲の状態でギリギリ頑張れたなら、山を越え平地に下降して圧縮されたとき、水は空気から熱エネルギーを返してもらい、再び空気と水蒸気の混ざった、太平洋側と同じ大気に戻れます。


 


しかしついに水蒸気の温度が液化する値まで下がってしまうと、水蒸気の持っていたカロリーは空気に奪われたまま、取り戻すことなく雨となって、この気団から脱落することになります。

こうしてこの空気は、かつて持っていた自分のカロリーと、水蒸気のカロリーを両方持ったまま平地で圧縮されるため、とても高温で乾燥した空気となるわけです。





太平洋から一緒に旅をして来た空気と水(水蒸気)ですが、山の上で空気に身ぐるみをはがされ、途中で地上に落とされてしまう水と、両手に2人分の財布やスーツケースを持って山を下りてくる空気の物語、これがフェーン現象です。

フェーンのあまりの猛暑に、人々の口から不満が漏れる時、それは山の上でカロリーをはぎ取られた水蒸気の怨念が、私たちの耳元で

「ダ、旦那ァー!ゼ、ゼヒ空気の野郎にィーー・・・、」ズダダァァーーーーーーン (効果音)

「ひ、ひとこと叱ってやって、お、お、く、ん、な、せェーー。」バッシィィーーーーン(効果音)

と囁いているのかもしれません。




,