ロシアからは様々な球が入ってきます。しかも安い!今回私の触手を動かしたのはヤフーオークションで球露屋が出しているGS-90Bです。この球のヒートシンク付きであるGS-9Bも3500円で良いのですが、こちらは更に安く1本2500円です。

しかもプレート損失は理想冷却状態で300Wありますから、1WあたりのコストC/PD=8,3円となり、余裕を見て150Wとしても17円以下です。と、ここで余裕を見てと言う言葉にひっかかりました。

この球のプレート入力(PEP)を若干抑え気味にすれば、自然空冷でも使えるのではないでしょうか。ただし強制空冷のわずらわしさから逃げて、20〜30W程度で妥協するのではなく、出来うれば自然空冷のみでPEP100W付近を目指そうという算段です。


            


静特性は規格表よりGm=15〜25mS程度、Ipカーブより増幅度μ=100程度と読み取れることから、2C39の300W版のようです。ただしIg-Vgグラフを見る限りEp=1,6kV、Eg1=10Vのときグリッド電流は10mAと2C39よりかなり少ない値のため、ドライブが楽かもしれません。

直線性はやや悪く、あまりシングルアンプ向きとはいえないものの、「オーディオはやってみなくちゃ判らない」のと、強引な自然空冷(?)への好奇心から、あえてアンプ作りを計画します。



   


今までさんざん自然空冷管を強制空冷してきたくせに、強制空冷管を自然空冷するとはアホか!と言われようとも、思い付いた以上は実行あるのみ。ただし自然空冷以上のハードルになるのは予想しなければなりません。。

ところでGS-90Bのプレートはヒートシンク用にM6規格のネジが切ってあり,そこに丸いナットが取り付けてあります。ロシア製の良い所はインチネジなどを使っていないので、工具の調達に不自由しないところでしょう。


                     


そこでプレートに巨大なヒートシンクを取り付けるべくヤフオクを探すと、コンピュータのジャンルに熱容量の十分ありそうな銅製CPUクーラーがあるではないですか


      


これを4個落札して余分なパーツを取り去り、2個を組み合わせて出来たヒートシンクは十分デカく、銅製だけあって3kgもあるずっしりと重いものとなりました。

      


この中央部に6mmのネジ穴を空け、球を取り付けたのが下の写真です。せっかく2500円で買ったのに、結局この状態で1本4500円へと値段が跳ね上がってしまいました。

ただし、もしこのような重量の銅製ヒートシンクが新品で出ていたら、素材の代金だけでほとんど銅の地金相場価格に等しく、とても微細な加工品として1組2000円では買えません。

これもパソコンのリサイクル市場というすばらしい環境があればこそですが、全てタブレットやウェアラブルに替われば、タワータイプもコレクターズアイテムとなるでしょう。


       


次に問題となるのが他の電極の温度で、規格表からプレートヒートシンク130℃に対しグリッド200℃となっています。つまりグリッドも相当熱くなりそうなのです。

ここで注意しなければいけないのは、表示がプレート温度ではなく、強制空冷時のヒートシンク温度だと言う点で、プレート温度の限界はセラミック部分の250℃と見るべきでしょう。


          


この球の中間部側面であるグリッド端子部分は、直径36mm弱で面積も広い一方、途中に小さいツバがついています。そこで3mm厚のアルミ板に36mmの穴を開けて3枚重ね、合計9mm厚の板としてソケットのグリッド用電極兼ヒートシンクにしました。

これならガッシリしていて、小さなツバ部分で重いヒートシンクを安定して受け止められそうです。いきなり9mm厚ではシロウトに直径36mmの穴はくり貫けませんが、3mm厚ならばホールソーが使えます。


       


さらにフィン付きの放熱器を4個、シリコン接着剤で取り付けました。こうして出来たソケットが下の写真です。中に0,2mm厚のりん青銅版でできた、ヒーター・カソード電極が見えます。

ここは本体の直径が20mm弱だったので、24mmの穴を空けました。その奥にやはりりん青銅で出来たヒーター電極が見えます。


              


       


シリコン接着剤はネットで見ますが、秋月が一番安いようです。また3mmx100mmx100mmのアルミプレートも、1枚280円でネットから10枚購入しました。グリッドに3枚ヒーターカソードとヒーターにそれぞれ1枚づつ使います。

ソケットに球を装着すると、もはや真空管はピンク色のセラミック部分以外ほとんど見えず、どちらかといえば、ヒートシンクでできた「お墓」という感じです。


            


またお墓の・・・。もとい、ソケットの各アルミプレートがそのまま電極となっていて、実際はここからリード線を出します。隙間から見えているピンク色のセラミック部分が、規格表で上限250℃となっています。


              


見た目は新興宗教のオブジェのようではあるものの、とりあえず通電して温度テストや、Ipカーブが計測できるところまできました。自然空冷で何ワットまで入力可能でしょうか。一応プレートの温度上昇限度は150℃程度を予定していますが、様子を見て変更します。

強制空冷管を自然空冷すること自体、意味が有るのか無いのか良くわからないし、変なデザインとなってしまった今回の企画ではありますが、実験用1500V電源を用意して温度テストを行うのが楽しみです。




つづく



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巨大ヒートシンクと放熱ソケット
その1
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