ナチスドイツのドイツ国防軍(WEHRMACHT・ヴェアマハト)がテレフンケンやバルボなどに製造させた小型送信管が、今回扱うRL12P35です。

ガラス管の大きさの割に、プレート損失は30Wとなっていて、ヒーター電力も12,6Vx0,63A=7,8Wと、6CA7などより小さな値となっています。

しかしこの球でUボートやパンサー戦車が暗号エニグマによる通信を行ったことを考えると、ミリタリー系マニアでなくとも興味を感じます。また別名はRS287です





規格表を一見して「やっぱりな。」と思う点は、第2グリッドの最大電圧の低さで、200Vというのは2E24並みとなり、とても3極管接続どころではありません。

これは5極送信管の表示上の宿命でして、送信管であるが故に、第1グリッドがかなりのプラス側まで振らされる動作のため、このように低い最大動作電圧が、第2グリッドに設定されているのです。

例えば下に掲載した6146の規格表抜粋からも、第1グリッドがプラスに振られるほど、第2グリッドの設定電圧が下がっているのがわかると思います。


    


しかし話がオーディオ用3極管接続となると、実状が全く変わってきます。つまりHVTC(高圧3極管接続)の出番となるわけです。

HVTCも提唱からすでに10年以上が経ちますが、なにしろ真空管における100年の歴史を基本から覆すような考え方なので、まだまだ普及には時間がかかることでしょう。


              


それにしてもRL12P35という球は立派な風貌で、プレート損失30Wがウソのようです。ちなみにこれらの球は、メーカーとしてはテレフンケンですが、ドイツではなくオランダの工場で作られていたようです

また中央の足は、ガラス管上部の端子と共通な第3グリッドのため、接続には問題ないとしても、カソードがハカマの金属部分となっているため、適合ソケットが入手しにくく、もしくは高価になっています。

下の写真はebayで購入した物です。比較的安い出物でも輸送費を入れると、単価4000円を超えてしまいました。


    
          オリジナルソケット コンパクトだが構造が複雑で数が少なく高価


その為か、この球は我が国での人気も今一つ盛り上がりません。おそらく本国ドイツでも同じでしょう。そこでソケット問題をクリアすべく、汎用ソケットによる改造を行います。

まず中央の足は頭の端子を使うことで考えから除外すると、残った足はUV-845などのラージUXが適合します。次にセラミック部分にM3用のネジ穴をあけ、ソケット上部のリング内側からハカマに設けられた溝に合うよう、真鍮釘とリン青銅でカソード端子を設けました。


       


       


こう書くと何やら簡単そうですが、実際にはこの部分の位置決めが、不器用な私にとって大変な作業なのです。


        


                     


本当は3P50用ソケットを作った時のように、中央の足にも端子を設けても良いのですが、せっかくのガラス管上部端子を有効に使うことにします。

というのも5極管の3極管接続では、第3グリッドもプレートにつないだ方が、相互コンダクタンスおよび内部抵抗の面で有利だという実験結果が出ているからです。


        
          3P50用改造ソケットの例


        
          同裏側


これでいよいよRL12P35におけるHVTC(高圧3極管接続)の計測準備が出来ました。どのような特性カーブが出てくるのか楽しみです。またプレート損失は、35W程度はいけるだろうと勝手に睨んでます。

しかしここでまた、ずるい考えが浮かんでしまいました。




つづく


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1、立ちはだかるソケット問題
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