まず理解しておかなければならないのは、「2A3系の1枚プレートと2枚プレートは、フィラメント電圧において別規格の球として考える必要があった。」と言う点です。
例えば
中国製や
ロシア製に限らずアメリカ製(Philco)の2A3であっても下のようになっているのが判りました。
その上で2枚プレートでも20%程度フィラメント電圧を下げれば1枚プレートに匹敵する特性を持ち、これにより性能の統一化がなされた結果、最大プレート電圧は300B並みの450V、プレート損失は一気に20W程度まで上昇することになるでしょう。
なぜなら今まで1枚型にはその程度の実力があったにもかかわらず、2枚型が足を引っ張っていたため、双方共通の規格として公表することが許されなかったに相違ないからです。
今後はRCAによって封じ込められた2A3の秘密を暴くため、こうした仮説を実験結果から証明する作業に入ります。そして以上のような身勝手な憶測を基に作成したのが下の動作ラインであります。
10kΩ負荷という値は2A3において異常とも思える高さですが、実は計測したグラフを通し「この値で使ってくれ〜。」と2A3が私に語りかけて来たのです。
ちなみにプレート損失が20Wであると推測する理由は、300B購入後1枚型2A3とプレートサイズをジックリ見比べた末の単なる直感(?)から来ていて、これは多くの人が私より以前から同様に感じている事ではないかと思います。
今回は出力段の歪がかなり少ないので、ドライブ段も6SN7互換とされる6N8Pの2段増幅により低歪な100V出力を狙い、その為さらに念を入れて6N8Pの測定も行います.。まずは初段です。
続いてドライバー段です。
この動作なら188倍(15倍×12,5倍)が得られ、0,53V(0,37VRMS)入力で最大出力が出るようになります。グラフはスベトラーナ製で、曙光電子製はややμが大きくなります。
以上の点を前提にして下のような回路図が出来ました。2段目の6N8Pには、歪の最少値を探すためのバイアス調整があり、「固定バイアス無し」つまり−8Vから若干それより深い状態まで調節できます。
より低歪であっても−8V以下にしないのは、最大出力電圧に対するストロークが不足するからです。
また場合によってはドライバーのカソードバイパスコンデンサーをはずすことも考えられますが、それは最終調整で行います。
2A3のフィラメントにはバッファローのLANルーター用ACアダプター(3,3V2A@300円)を各々1個用い、0,3Ωで1,8Vに落とします。電流容量がギリギリの為ジワジワと電圧が上がってゆき、フィラメントを傷めません。パソコン環境は近代真空管回路にとって実に有難い存在です。
取り付けはアダプター本体にL字金具を接着して、シャーシへネジ留めします。また回路図では省略しましたが、このアンプはゲインが高めなので、6N8Pについても電源トランス付属のヒーター巻き線により普通に直流点火します。
ゲインと言えば、かつてその手の雑誌に「電圧増幅段を6SL7から6SN7に換えたらノイズレベルが下がった。」と、まるで6SL7のノイズが多いかのような記載がありました。
実は全体のゲインが下がった当然の結果で、分かっている人には分かるはずとは言え、誤解を招きやすい表現に対しては注意が必要です。と偉そうなことを言っていたらエライ事がおきてしまいました。
つづく
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