通常トーンコントロールには余計な増幅回路や素子を通過させる必要が出てくるため、ディープなマニアはそれをきらって使いません。
そこでRIAAイコライザー自体にその機能を持たせたら余分な回路が付加されないのではないかと、とりあえず高域だけ変化可能なトーンコントロールを作ることにしました。
このプリアンプにおけるRIAA高域減衰用コンデンサーは375pFですが、この位の静電容量ならばAMラジオのバリコンが使えるのです。
しかも5球スーパー用ならば2連ですから、ちょうどステレオで構成できる上、CR型なのでローター側が共通アースとなっていてもかまわないと言うわけです。
よって低音域のコントロール機能はありませんが、オーディオ回路の、それも周波数特性に深く関係するRIAAイコライザー部分にエアーコンデンサーであるバリコンを使用し、その容量変化で音質調整をすることにしました。
このラジオのようなプリアンプはエアーコンデンサー自体の音色も興味ありますが、バリコンによる音質の変化も楽しみです。
実際の外観は下の写真のように、わざとバリコンを見せ付けるイヤらしい構成なっています。コンデンサの容量は180pF〜520pFで、ツマミが真上になったとき、フラットである375pFになるようにしてあります。
ただしギア付きバリコンなので回転角度は540度くらいあり、微調整ができます。
このトーンコントロールはNFB量や音声電圧を上下させる回路を付加したのではなく、本来必要であるEQ用コンデンサ自体の容量変化により周波数特性を変化させているため、サウンドクオリティーの変化が少ないと期待されます。
またバリコンの挿入部分は、他のEQ素子とはアイソレートされている上に、すでに2段階増幅した電圧レベルの高い場所でもあるので、このような大ざっぱな事が出来るのです。
ということで音を出してみると、このトーンコントロール「そうそう、こうしたかったんだよなー。」と言う感じで高音の上下を行えます。
コンデンサーの容量を増やしてゆくと、高音がソフトになるのですが、こもらないのです。また容量を減らしてゆくと、いわゆるヌケが良くなるのですがうるさくないのです。
なんとも不思議な風合いのトーンコントロールという印象で、今後の実験や依頼製作のため、思わず同様な2連バリコン(ただしギア無しタイプ)を10個ほど再注文してしまいました。
というのもバリコンを使ったトーンコントロールの音を知っている人間が、もし世界で私だけだったら、これはもったいない話だと感じたからです。
さらに現在は容量不足の部分を固定コンデンサでカバーしていますが、バリコンを2台使用することで全てエアーコンデンサだけで構成したいと考えているからです。
またこれはスクラッチノイズの多いけっこう傷んだレコードを聴いて気付いたのですが、分離が良いせいかノイズが浮いて聞こえ、楽器の音は楽器の音として分けて聞こえるので、音楽に集中しやすい点が助かります。
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