オーディオアンプとして極端に少ない製作例を誇るのが、X管と呼ばれる送信管を使ったジャンルです。何しろガラスチューブは見えないし、ヒーターやフィラメントの耀きも楽しめないのですから。

しかもトランジスタアンプでさえ自然空冷が当たり前の時代に、強制空冷が前提のオーディオ用真空管アンプなんて、労多くして益少なしの典型と言えましょう。

さらに4CX250Bならまだしも同軸タイプの250Kに至っては、本来の使用目的である送信機でさえ、ネット上にアップされている画像数が極端に減ります。というか実装例は見当たりません。

即ちこの球に関しては、優秀な性能を持ちながらもアマチュア無線家たちが手をこまねいているからこそ、3000円という破格値を生じさせているのでしょう。これはうれしくもあり、また淋しくもあります。

ということで値段が安いこの時期をチャンスと捉え、オーディオ分野にてお先に使わせて頂きます。つまり実験結果にもよりますが、HVTCの対象とさせて頂きますので夜露死苦!


   


今回の4CX250K・HVTCシングルアンプ作りは、まずソケット対策から始めなければなりませんが、専用ソケットは市販されていたとしても安くは無いでしょうし、それ以前にどこで売っているのか見当すらつきません。

そこで自作を余儀なくされる訳ですが、ただ電極に触れているだけではダメで、通気性や気密性も確保する必要があり、更にあまりコストも掛けられません。なにしろこの球の魅力は活用難易度が高いが故の低価格なのですから。

そうした条件から手に入り易く価格も安い市販の材料を使い、なんとかにひねり出したのが下の図のようなソケットです。


     


用いた材料は1,5mm厚のベーク板と0,2mm厚のりん青銅板及びネジ類なので、数百円程度の費用しかかかりませんし、不器用でアバウトな私でも作れるように複雑な加工部分は一切ありません。

こうして出てきた最初の設計プランには問題点が残りました。まずプレートにバンドを巻かなければならない点、更にはヒーターやカソードにはいちいち端子を接続しなければならない点など、これではソケットとして手間がかかりすぎます。

しかし一度具体的なビジョンが出てくると、それがブレークスルーとなるため、ただ差し込めばOKの電極を持ったソケットに発展しました。また専用チムニーも一応購入しておいたのですが、構造上不要となりました。


           


ちなみにトップのベーク板にある大きな穴は、油圧式シャーシパンチの43mmで空けました。当初穴の周りにヒビが入ってしまうのではと心配する中、思い切ってやってみると1,5mmという薄さが幸いしたのか、実にキレイに空いてくれました。そして更にラッキーなのは、この直径がラジエーターにピッタリのサイズなのです。


       


次にこれを小型シャーシに納め、2πファンを上向きに設置した独立型冷却キャビティーをつくります。今まではこうした場合、シャーシ内部を密閉して底板にブロワなどを直接ネジ止めするため、シャーシ全体が振動を増幅して騒音が問題になったり、気流の冷却効率が悪かったりしたのです。

しかし2πファンはそれ自体軽量な故に、クッション材の上に両面テープで取り付けるだけなので、作業がムチャクチャ楽であるにもかかわらず振動遮断能力を格段に高く保てます。

しかもキャビティ自体をブロワの一部として機能させるため、非常に効率よく球全体を冷却出来ると同時に、ファンが裸状態なのでとてもコンパクトに仕上げられます。


               


      


この様な経過から、なんとか電気的にも機械的にも熱的にも測定を始める環境が整いました。早速待ちに待った「誰も見たことの無い」特性カーブの計測を開始しましょう。この表現は少しイヤミですが、あえてそうしています。

       つづく







オーディオマニアに不人気なX管を思う
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1 オーディオマニアに不人気なX管を思う
2 ついにベールを脱いだ4CX250K-HVTCの実態
3 冷却キャビティの実力はいかに
4 4CX250って、こんなヤツだったんだ・・・。
5 X管によるHVTC最後の仕上げ