今回は久々の純粋な3極管によるアンプとなり、ロシアのGM−70を使って製作オーダーに応じる事にしました。最大のメリットは845や211に比べて、定格が大きいにもかかわらず1本4000円程度と価格が非常に安い点です。
その理由はこの球がロシア製で、デビューが比較的新しいため、ソケット入手の問題も含めフルスペックでシングルアンプを製作した前例が少ないからでしょう。
10数W程度のアンプを作るのに、60Wのヒーター電力を含め、これほどの定格はいかにも大げさ過ぎると言えるます。
そしてロシア球の面白さは、値段の安さもさることながら、フィラメント電圧の変則的設定にあり、このGM70もGK71同様なじみの薄い20V管で3Aです。
交流点火ではフィラメントから20Vの信号を入力しているのと同じなので、当然直流点火が大前提となりますが、どうせ直流点火を行うなら、845などの10Vなどよりも20Vで設定された方が、リップルフィルターを構成しやすく経済的です。
ケミコンの値段は耐電圧10Vでも20Vでもほとんど同じですが、仮にこの球が10Vだったら電流は6Aとなり、対応する抵抗もしくはチョークで、思わぬ出費とスペースが必要になってしまいます。
このようにマニアにやさしいロシア球GM70に安価なソケットが出てきたので、完成まで生きていられるかどうかわかりませんが、さっそく製作の準備に取り掛かりました。
この球はオーディオ管だけに、ちゃんと特性カーブが用意されています。ただしプレート電圧が2000Vでましか出てないので、これに少々手を加えて設計したのが下の図です。
この動作はプレート電圧をはじめ、ほとんど定格ギリギリですが、だからといって性能を犠牲にしている訳ではありません。むしろ歪はもっとも少ないでしょう。唯一気になるのが20KΩという負荷抵抗の高さです。
実際は10KΩのOPTを使うことになりますが、インダクタンスの不足が問題です。ちなみに14KΩのプランは下の図のようになります。
これも悪くありませんが14KΩの大型OPTがありません。そこでさらに電圧を下げてみたプランが下の図になります。
これなら手元にあるPTの定格と相性が良く、ドライブ電圧も程よい大きさです。
ただしB電圧が高いので、ドライバーに6AU6を使うのはムリと判断し、ちょうど1200V以上で作動する6HV5を採用することにします。
今まで扱った経験から言うと、この6HV5はヒーター電流が1,5A、つまり12AX7などの10倍もあるため、カソードの熱容量が大きく、交流点火でもヒーターハムが出にくいようです。
さらにこの球の特徴であるビームプレートは、交流的にアースするため、シールド効果をもたらしてくれているようで、球のそばに手をかざしても、MT管のように誘導ハムを拾う事がほとんど無く、初段管にぴったりです。
増幅度も200倍あり、250Vまでドライブできます。
次はお決まりの回路図です
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