この球の規格表に出ている数値の中で、
Durchgriff (ドーチュグライフ)という値に注目すると、若干測定値との差異があります。これは
Penetration factor とも英訳され、増幅率μの逆数つまり 1/μ を意味します。
この値を規格表の記述に当てはめると、字がかすれて見えにくいですが17〜23%となっているので、中心値を20%つまり
0,2 とすると、
μ=1/0,2
=5
程度が本来の値となり、測定値のμ=3 と差異があるというわけです。
以上の点を踏まえて、180°からさらに180°方向転換し、つまり最初のプランに戻ってみたら、果たしてそれは通用するのかを試してみたくなりました。
具体的には
「総統の呪い」を無視して3極管接続のまま長時間電流を流し、特性に影響が出るかどうかを調べる、いつもながらの長期戦となりますが、邪道真空管研究家としては、今の所これしか方法が思いつきません。
まずは3極管接続状態でEp=600V Ip=40mAつまり24W入力で1000時間ほど動作実験をしましたが、実に電流は安定しています。
ところが先日周囲の配線を整理している最中、プレートに高圧をかけたまま誤ってヒーターを3Vまで下げてしまったためか、またもや2本目のサンプルもバーストを起こしてしまいました。
さっそく前回同様ガラスを割って電極を観察すると、実験中ずっと赤化していた第3グリッドは焼けたような様子もなく、まるで何事もなかったように、実にきれいな銀色をしていました。
さらにバースト箇所はカソード上部で、第2グリッドなどに問題はありません。下の写真では中心のカソードに、黒くぽっかりと穴が空いているとわかります。
一番外側の広いスパンで巻かれているのが
「総統の呪い」、つまり1000時間の実験中ずっと赤化していた第3グリッドの表面で、きれいな金属光沢が見られます。
以上の点から真空管において重要と感じたのは、いかに良好なカソードを作るかにあるのではないかと言う点です。以前色々なメーカーに対し2A3のエミッション特性を計測した時にも感じましたが、優秀なエミッション特性はカソード(フィラメント)の性能でずいぶん変化するものです。
私たちは真空管を見るとき、ついついプレートのみを見てしまいますが、直熱管や、ひいてはタングステンフィラメントの音がどうのこうのと言うのも、あながち無意味ではない可能性がありますが、大切なのはそのフィラメントがどのような性能なのかを探る点でしょう。
と言う事で3本目のサンプルを計測し始めたのですが、なんと
「総統の呪い」が起きていないではないですか。とりあえず3極管接続のカーブを計測すると、前の2本とピッタリ同じでした。
しかしもしやと思い5極管特性を計測してみると、ついに立派な5極管特性が出現したではないですか。ついでに3本ほど計測すると、どれもOKです。
Gmの値もEc=−10Vから−20Vのあたりで3,7mA/Vと規格表通りになっています。
どうやら呪われていたのは、最初の2本だけだったようですが、残った多くのサンプルにも
「総統の呪い」に憑りつかれている者が居るかもしれませんので、使うときは注意しましょう。
また変な5極管特性は、頭のピンを接続し間違えて計測していたのでした。なんとかスタート地点に戻れたところ、で安心して入院できます。
さらにカソードに空いた穴ですが、これは実験用ヒータートランスと電源トランスの間に何もいれなかったため、高い電位差が発生したせいかもしれません。これによりカソードからヒーターに向けてスパークが飛んだというわけです。
やはり実験は落ち着いて慎重に進めるべきでしょう。
つづく
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