5極管やビーム管を3極管接続にするとき、あなたはプレート電圧をどのように決めていますか?
おそらく誰もが第2グリッド(G2)の耐圧でプレート電圧が決まると考えているのではないでしょうか。
特に送信管においては、1000Vを越すプレート耐圧に対し、G2の耐圧が低い場合、その電圧で3極管接続のアンプを設計する事になります。
その結果、持て余し気味のプレート定格を横目に、低出力のアンプでガマンするか、G1をダーリントン接続でプラスまでドライブし、強引にパワーを搾り出すパターンが一般的のようです。
それはさておき、今回実験するソ連のGK71など、G2耐圧はたったの400Vで、KT88などよりも低くなっています。
しかし私の考えるG2耐圧とは、5極管や、ビーム管接続において、
第1グリッドが0V付近になった時、つまりロードライン上プレート電圧がG2電圧よりずっと低い値になった時、
@「G2の電流が急激に増加してもG2が壊れない電圧」であり
A「ケミコンンなどの、物理的耐電圧」とはまったく異なる。
と分析しているのです。さらに多くの送信管は、G1をかなり高いプラス電圧までドライブすることが多く、その場合のG2電流によるG2損失は相当な大きさになります。
つまりKT88よりも低い400Vとは、耐圧ではなく実動状態の損失に対する最大安全電圧を意味しているのではないでしょうか。
こうした点から、私は今までの常識に疑問を持ち
「3極管接続とは、プレートと共にG2の電圧が低下する特殊な動作であるから、G2の耐圧はプレートと同程度でも良いはずである。」と考えました。これが
ヤナギダ理論のスタート地点です。
又実際の
耐圧テストはここからも見ることが出来ます。GK71は、その構造から813と同等と考えてよいでしょう。
そこで今回はメーカーの最大定格400Vを無視して、GK71による、プレート電圧(=G2電圧)1200Vの3結アンプを作り、その仮説について実証実験を行います。もちろん球の損壊も覚悟の上です。
まずはベ−ク板とリン青銅でGK-71のソケットを製作し、ヒーター電源だけ組上げたシャーシで3極管接続時の特性を測定してみると、、直線性は相当良さそうな一方、最適バイアス点はSV811−3よりさらに深く、マイナス200V位になります。
この時得られる最大出力は32Wで、さらにWEBで調べると、なんと特性カーブを計測した人がいました。世間は広いものです。そして、特性は予測に近いこともわかりました。
今回のドライバーには6CA7(T)を使います。プレート供給電圧約1000Vなら、320V程度のドライブ電圧が取り出せます。
問題は6CA7のプレート抵抗のワット数でして、計算上でも15Wを越えるため、発熱の点で、100W程度では収まらないでしょう。
また全てのケミコンも4階建てで、その上実質容量が4分の1になるので、シャーシ内外は部品の山になってしまいそうです。
しかし、これこそが送信管を扱う醍醐味なのです。送信管を低い電圧で手軽に楽しむのは、出来ることなら入門用にとどめておき、後々は、このバカバカしさを味わって欲しい気がします。
まずはヤナギダ理論を証明するため、実験用アンプの製作と測定を行います。
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