私はパワー管の安さについて通常「C/Pd」(コストパープレートディサペイション)という値を独自に使っています。これは球の値段をプレート損失で割ったセコイ値で、例えばプレート損失100Wの100THが1本1万円だった時は、
C/Pd=10000円/100W=100円/W
つまりプレート損失1Wあたり100円となるわけです。根強い人気の45などは400円/Wと高級です。一方、今回購入した6C33Cは2500円でプレート損失60Wですから
C/Pd=2500円/60W=41円/W、
つまりプレート損失1Wあたり41円で、これが私の「安い!」という基準50円/Wをクリアした結果、衝動買いしてしまったわけです。
そこで早速6C33シングルアンプの設計をしてみたところ、規格表の特性曲線からEp=300V Ec=-110V、Ip=150mA、RL=2,5KΩで出力14,8Wが出せそうです。
6C33シングルアンプといえば、600Ω負荷で作動させたオーディオ専科のフォックスバットが有名でしょう。1994年頃の発売時はなんと20W×2と発表してしまい、その後15W×2に納まっています。
しかしEp=200V、Ec=-70V、Ip=180mA、RL=600Ωでロードラインを引いてみると、その動作条件に、よくわからない部分があります。
つまりこれではAB1級動作に近いため、2次歪で8W弱からカットオフが発生し
(赤のライン)、またプレート入力も36Wと、15Wを出力するには理論上足りません。
600Ω負荷の場合、Ec1=-60V、Ep=180V Ip=300mAという動作条件なら、14Wが3%以下の歪で出せるはずですが、
(青のライン) 課題が2つあります。
第1にPTのDC電流容量が、ステレオで常時600mA以上必要になること、第2にOPT1次側の許容電流値が300mA以上あり、その時インダクタンスの低下が起きない必要があることです。
当時使用されたタンゴのXE-20-600SなどはOPTとしてギリギリOK(最大許容320mA、通常270mA))で、50Hzくらいが低域のカットオフになります。
また同様にPTのMX-520は電流が微妙で(最大520mA)、アイドリングを抑えないと2時間以上の使用で触れないくらい熱くなるでしょう。
しかし、それらの点はひとまず置いておき、今回は独自の設計を検証してみます。2,5kΩのOPTは入手が容易で、5kΩのOPTを応用すれば低域でさらに有利です。
負荷抵抗2,5KΩという値はとても重要で、せっかく安くなった6C33のアンプを作りたくても、OPTが600Ωというだけで入手難=意味なき高価格となってしまい、制作意欲にブレーキがかかるからです。
これはこの球がデビューした当時、そうした記事ばかり発表していた関係雑誌の執筆者による、悪意なき悪影響といえましょう。
出力段は80Vを固定バイアス、残り30Vを自己バイアスとするため、6C33のプレートには330Vを供給します。
またドライブ電圧が110V あるため、
ドライバーはSV811-3アンプと同様、P-Pで400V程度出せる設計にします。
つまり出力段に必要な電圧の2倍を出せるライバーを作るわけですが、そのための供給電圧670Vは、半波倍電圧回路を、両波整流的に組み合わせて作ります。
次は回路図です。
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