2C39と言う球を入手したきっかけは以前、「オークションのジャンク扱いが700円という低価格で出品されているけど、何もしないの?。」と悪友にそそのかされたためで、まんまと6本ほど単独落札させられてしまったのです。
そんな経緯で落札はしたものの、A1級から2級にまたがる電気的な特性の処理や、ソケットのプランが全くまとまらず、当初はしばらく放置するしかありませんでした。
ところが最近無性にこの球が気になり、取りあえず電流特性を調べてみると、直線性に若干の問題点はありながらも、一応A1級動作においてそこそこの出力が得られるではありませんか。
ただしプレート入力が72Wで出力9Wとなるため、12%という低いプレート効率による動作はちょっと不本意ですし、またプレート電圧が規格より200Vオーバーしているのも気になります。
どうせ作るならば「この球でも音が出た」といったアンプではなく、充分ポテンシャルを引出すべく研究して、球への価値観や存在意義を高めてあげるべきでしょう。
なぜなら「製作者が主役」といったアンプでは回路の掘り下げが浅くなりがちで、結果的に捨てられたペットのごとく、次々と同じようなアンプを作っては飽きるという繰り返しになりやすいからです。
そこでA2級領域まで手を広げ、グリッドをプラス5Vまでスイングすることにすると、15W程度まで出力を増やすことが可能だと判りました。これでもプレート効率は20%です。
一方問題はこの時のグリッド電流です。811Aのようにグリッド電流が流れっぱなしならまだしも、A1,A2級混合動作は信号の途中で急に流れ出すと言う、典型的非直線回路になります。
実際にグリッドをわずか+5V まで上げただけで、グリッドにつないだ電流計は50mA近くまで振れ、又この計測結果は規格表とも一致しています。
単純計算でも、プラス側に振れた場合の入力インピーダンスは、数100kΩからいきなり100Ω程度まで低下することになるため、極めて出力インピーダンスの低いカソードチョークなど、パワードライバーでダンピングファクターを稼ぐ必要があるわけです。
つまり50mAと言う出力電流を取り出せる、論理回路で言うところのファンアウト(FAN
OUT)も併せ持つ必要があるため、40〜50mA程度のプレート電流で動作させるドライバーでは歪が発生して使い物にならないでしょう。
たとえば汎用型OPアンプの出力インピーダンスがいくら低いと言っても、10Ωの負荷に10V、つまり1Aも電流が流せないというのと同じ原理です。
そこでドライバーのアイドリング電流をグリッド電流の3倍である150mA とすれば、内部抵抗が低くあまり大げさな球でない6S19Pで設計すると、プレート損失内ではEp=70V程度の動作となりました。
ドライブ電圧はプラスマイナス20Vもあれば十分な反面、ドライバーのカソードチョークは150mA以上流せるものが必要になり、70Vの可変電源も2組必要です。インダクタンスは5Hもあればいいでしょう。
グラフのカーブからこの動作条件における6S19Pのgmは15m mho(S)と示され、、出力インピーダンスは67Ωくらいになるため、なんとかドライブ出来そうです。
以上の設定で確かに15Wのアンプが出来るわけですが、9Wから6割増しとするだけでこれ程の手間を掛ける必要があるのか、若干疑問も湧きます。
ドライブ電圧は13V程度ですから12AX7の片側で充分でしょう。ともあれ一応ラインナップが揃いましたので早速回路図を作りましょう。
つづく
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